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2018年10月6日 (土) 09:14時点における最新版

反帝国主義・反スターリン主義(はんていこくしゅぎ・はんスターリンしゅぎ)とは、日本の新左翼理論家の黒田寛一による思想。略称は「反帝・反スタ」(はんてい・はんスタ)。

反帝国主義反スターリン主義を同時に実施すべきとする。日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派革マル派[1]革命的共産主義者同盟全国委員会中核派[2]革命的共産主義者同盟再建協議会中核派関西派[3]などの基本理論となっている。

概要[編集]

黒田寛一が提唱した反スターリン主義は、「真のマルクス・レーニン主義」の立場から、スターリンによる「マルクス主義の歪曲」や「世界革命への裏切り」、日本共産党による1955年の武装闘争路線の放棄である「六全協」などを批判し、更に「トロツキズムの乗り越え」として「スターリン主義と帝国主義は同時に打倒されなければならない」とする。

この立場では、ソ連などの既存の社会主義国家は「社会主義体制」ではなく、また、レフ・トロツキーが定式化した「官僚的に歪められ、堕落した労働者国家」でもない「赤色帝国主義」(社会帝国主義)あるいは「国家資本主義」であり、労働者は被支配階級であるとの認識に立つ。そして、資本主義国家での支配階級は独占資本であり、「スターリニストが支配する自称"社会主義国家"」での支配階級は「党官僚」と主張する。それゆえ反スターリン主義は、ソビエト連邦(ソ連)や東欧中華人民共和国中国)、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)等の既存の社会主義を全否定する。あるいは、共産党が権力に就いていない国においても、「共産党が間違った理論・方針で大衆を組織しているから革命が起きない。既存共産党は革命の阻害物であり、国家権力と同等の敵」と規定し、共産党を打倒して取って代わる革命政党を建設しなければ革命は起きない、とする。

これは「ソ連 = 国家資本主義」論に立つ点ではイギリスのトニー・クリフなどの左翼共産主義と共通するが、黒田寛一は既成の在野の共産党も含めて「労働者階級の敵」と規定する点が異なる。革マル派および中核派は、このような理論と運動は世界の革命運動においても日本にしか存在しないとし、それをもって「反スターリン主義の党派が存在するゆえに日本の革命運動は最も先進的である」とする。革マル派は「世界に冠たる反スタ主義(もしくは黒田思想)」、中核派は「日本革命を世界革命の突破口に」という表現を、各派の機関紙などで使っている。また、革マル派および中核派は「世界革命」を最終目標に掲げているが、第四インターナショナルのような国際革命組織に加盟したり、あるいはあらかじめ自らの国際組織を形成するのではなく、自派主導の「日本革命」を成功させ、その権威で国際組織を形成して革命を世界に広げる、という方針を掲げる。

日本の新左翼は一部の構造改革派を除き、総じて「スターリン主義」を批判する立場にある。共産主義者同盟は、スターリン主義の本質は帝国主義の補完物であると捉えており、帝国主義が倒れたならばスターリン主義も崩壊するとする。スターリン主義を帝国主義と同等の打倒対象として明確に「反スターリン主義」を掲げているのは、日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派(革マル派)と、革命的共産主義者同盟全国委員会(中核派)である。そこでは、ソ連や中国、北朝鮮、ベトナムキューバなどの既存の社会主義労働者国家とは認めず、党官僚専制支配国家として打倒対象とする。革マル派のように反帝国主義よりも、反スターリン主義を優先させる傾向もある。「反スターリン主義者」からすれば、コミンテルンの系譜に属する日本共産党は、スターリン主義政党であり打倒対象にされる。

「反スタ主義」の提唱者である黒田寛一は著書『革命的マルクス主義とは何か?』において「一般に革命的政治運動というものは、現象的には(本質的にはではない カッコ原文ママ)極めてヨゴレタものであり誤解にみちたものであって、政治的、あまりにも政治的な“陰謀”をすら活用しないかぎり(この点ではレーニンの右にでることのできる革命家はない カッコ原文ママ)、そもそも政治そのものを止揚しえないのだという、このパラドックスが、ぜひとも自覚されなければならない。だから、赤色帝国主義論者をすら活用して、動揺と混乱の渦巻のなかにある日共指導部を瓦解させる一助たらしめるという“陰謀”をたくらむべきである」として、「共産党を打倒するためには権力をも利用する」ことを主張し、1959年に自ら日本民主青年同盟の情報を警視庁に売ろうとしている(未遂)。このような「反スタ主義」は極端な独善主義(「自らの勢力以外は間違っているから反革命」あるいは「自派主導でなければ革命は起きない」とする思想や、「自派以外を潰すためには、本来敵であるはずの勢力にも積極的に協力する」という手法など)に行き着き、日本新左翼運動に蔓延した内ゲバの根拠の一つとなったと言えよう。

ソ連邦崩壊後の「反スターリン主義」の位置付けは、それ以前とはかなり変化している。かつては、革マル派はベトナム戦争について「スターリニストに軍服を着た労働者である米兵を殺させる(ゆえにベトナム戦争反対)」という立場であり、中核派は「北部ベトナムホー・チ・ミン政府=南ベトナム民族解放戦線不支持・ベトナム人民連帯」(その立場から1975年のベトナムの最終的勝利を「サイゴン失陥」=米帝は誤ってサイゴンを陥落させた=『解放勢力』の勝利そのものは支持しない、の意)と表現したように、「反スターリン主義派」はアメリカ(帝国主義)と戦う勢力ならば無条件で支持する、というような立場からはほど遠かった。しかし、90年代に入って、「先進国労働者革命主義」の立場から第三世界での革命や反植民地運動にまったく無関心だった革マル派は、1995年フランスの核実験の際にポリネシアにメンバーを派遣して、「核実験反対」とともに「ポリネシア独立支持」のスローガンを掲げた。また、革マル派・中核派ともに、9.11同時多発テロを全面的に支持して、かつて「CIAに支援された反共ゲリラ」と規定して否定的だったアルカーイダなどのイスラム原理主義勢力を、現在は「反米勢力」と認知して連帯を表明している。

あるいは現在、両派ともに北朝鮮に対して「排外主義扇動反対」という主張から「スターリニスト体制批判」をほとんど控えて、「米日帝国主義批判」を優先させている。とりわけ中核派は、2007年3月3日に行われた在日本朝鮮人総聯合会(朝鮮総連)が主催した「日本当局の朝鮮総聯と在日同胞に対する不当な政治弾圧と人権侵害に反対する在日朝鮮人大行進」に、「全学連」などの旗を掲げて沿道から声援を送った。「反スターリン主義派」にとって「スターリニスト組織・朝鮮労働党の出先機関」である朝鮮総聯が主催し、「スターリニスト独裁者」である金日成正日親子の肖像を壇上に掲げるような集会とデモ行進に「連帯」の意を表明するなどということは、ソ連邦崩壊以前にはありえなかったことではある。これらの変化は「ソ連スターリン主義体制」という敵対する一方の極が崩壊したことによって、両派ともに「反米主義」の傾向をより強めた、という見方も成り立つだろう。

しかし、日本共産党に対する敵対的姿勢は基本的には変化はなく、両派ともに「日共スターリニスト打倒・解体」の路線を堅持しているが、90年代後半あたりから日本共産党系の大衆団体と集会で同席することが、革マル派・中核派ともに増えている。もっとも、その際に、両派ともに集会場で日本共産党(とその指導部)を批判するビラを集会でまくこともある。特に、革マル派は自派の機関紙「解放」の中で、彼らが「良心的」と称する下部日本共産党員を、こうした日本共産党系の集会の集会場での情宣の結果、革マルへと引き抜いたことを成果として機関紙上に書くことがある。彼らは機関紙上で日本共産党員の引き抜き成果の誇示、そして、下部党員の日本共産党からの離脱と革マル派への結集をたびたび呼びかけており、どちらが「本物」の共産主義革命を目指す組織かはともかくとして、日本共産党側からすれば、非常に迷惑な「かく乱作戦」とも言える。

黒田寛一[編集]

黒田寛一による「反帝国主義・反スターリン主義」の説明は以下である[4]。帝国主義的段階におけるプロレタリアートの普遍的課題は「反帝国主義」で、反スターリニズムは特殊的課題であった。しかし、帝国主義とスターリニズムに基本的に分割された現代世界そのものを革命的に変革するための世界革命戦略が「<反帝国主義・反スターリニズム>」である。この<反帝>と<反スタ>は「直接的に統一されて」おり、「論理的に同時的な戦略」をなす。<反帝・反スタ>戦略は、「反帝」に反スターリニズムを「接ぎ木ないし結合したにすぎないものではない」。 テンプレート:quotation

本多延嘉[編集]

革命的共産主義者同盟全国委員会(中核派)の最高指導者であった本多延嘉は、1972年7月に「反帝国主義・反スターリン主義」について以下の講演を行った[5]

本多延嘉は、「反帝国主義・反スターリン主義」とは「現代世界の根底的変革にかかわる綱領的な立脚点」または「現代におけるプロレタリア革命の基本的戦略」と規定した。 現状は世界革命の過渡期で、世界は帝国主義社会主義に分裂しているが、帝国主義は延命し、社会主義はスターリン主義的に変質したため、両者は平和共存的な関係を実現しているが、この結果、帝国主義の矛盾は爆発し、スターリン主義の破産があばきだされ、世界体制の崩壊が進行している、とした。以上の時代に対応した革命戦略として、「反帝・反スターリン主義の世界革命戦略」を確定しなければならない、とした。

また対立する革マル派を「カクマル」と呼び、その資本主義社会論は「小ブル的性格」であり、プロレタリア独裁をめざす闘争ではなくプロレタリアートの経済闘争の政治化をしており、暴力革命論を否定し、「経済主義、組合主義、民同の反革命的補完物」となっている、と批判した。

批評[編集]

  • 中核派の清水丈夫は、書籍で「カクマル黒田のえせ「反帝・反スタ」の腐敗と破産を暴く」と記した[6]
  • 三上治は「反帝国主義・反スターリン主義」を、「米ソの世界支配体制とそれを支えている世界理念(自由主義陣営.社会主義陣営)を否定すること、あるいはそれに異議を持つことと、それに代わる世界のイメ—ジとして世界社会主義を提起する」と記した[7]
  • 栗原幸夫は「「前衛党神話の崩壊」が「六十年代」の幕を開き、「反帝国主義・反スターリン主義」が一政治党派のスロ—ガンを超えて多くの活動家に共有された。」と記した[8]
  • 革命的労働者協会(社会党社青同解放派)は、革マル派の「反帝・反スターリン主義」は、現代社会の普遍的制約者が「帝国主義」であることを見失っているとして批判している[9]

脚注[編集]

  1. 日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派スローガンは「帝国主義打倒!スターリン主義打倒!万国の労働者団結せよ!
  2. 革命的共産主義者同盟全国委員会 中核派スローガンは「反帝国主義・反スターリン主義の旗のもと 万国の労働者団結せよ!
  3. 革命的共産主義者同盟再建協議会スローガンは「反帝国主義・反スターリン主義 万国の労働者と被抑圧民族は団結せよ!」る
  4. 「日本の反スターリン主義運動 2」(黒田寛一、こぶし書房、1969年、p261-264)
  5. 反帝・反スターリン主義とは何か - 本多延嘉
  6. 「反帝・反スターリン主義とは何か 清水丈夫選集 第1巻」(清水丈夫、前進社、1998年)
  7. 「1970年代論」(三上治、批評社、2004年、p223)
  8. 「大転換期: 「60年代」の光芒」(栗原幸夫、インパクト出版会、2003年、p352)
  9. 革共同革マル派批判 中原一 1973年7月

出典書籍[編集]

  • 『日本の反スターリン主義運動』全2巻(黒田寛一)こぶし書房

関連項目[編集]